Steinway Owner Interview

音楽を通じた“豊かさ”が息づく場所

- 福原グループ・福原和人様に聞く、新たな文化拠点のこれから -

2025年1月、東京・広尾に誕生したサロンホール「La Salle F」。そこには、100年以上の歴史を誇る福原グループの新たな挑戦と、音楽文化への深い想いが込められていました。今回は、福原グループ5代目であり、La Salle Fの代表を務める福原和人様に、このホールが生まれた背景と未来への展望についてお話を伺いました。

-本日はお時間いただきありがとうございます。
福原様は、資生堂創業家会社である福原グループの経営に携わるお立場と伺っております。その方がなぜ、こちらにこのようなホールを設立されたのか、きっかけを教えていただけますでしょうか。

福原グループは資生堂創業者・福原有信が設立したファミリー企業で、100年以上の歴史を重ねてきました。1921年に資生堂と福原を分社化した後も、銀座を中心に事業を展開してまいりましたが、このたびご縁があり、広尾に新たな事業拠点を構えることとなりました。本籍地は変わりませんが広尾に新たな拠点を設けるにあたり、新しいことを積極的にやっていこうという思いがありました。
そこで着目したのが、1919年に初代社長の福原信三が設立した「資生堂ギャラリー」です。様々な人が訪れ、美しい芸術に触れることができる資生堂ギャラリーは、当時文化サロンのような役割も果たしていたと聞いています。そうした空間や活動を、現代にふさわしい形で甦らせることができないか──そんな思いが、このホール構想の原点です。
「サロンとは何か」ということから考え始め、人が集う場所を作るという発想に至りました。ただ、現代において人が集まるというのは決して容易なことではなく、興味や関心も多様化しているため、そうしたコミュニティをつくるのは簡単ではないと感じていました。
そこで、人々の心をつなぐ“共通の軸”のようなものがあった方が良いのではと考えたのです。資生堂ギャラリーとの大きな違いとして、私たちはピアノを設置するという選択をしました。それも最上級のピアノであることが望ましいと考え、ピアノを中心としたサロンホールを目指すこととなりました。

弊社スタインウェイのピアノをお選びいただいた理由や、福原様ご自身のピアノとの関わりについても、何かエピソードがあればぜひお聞かせください。

スタインウェイさんについては、私自身がピアノを習っていた頃にレッスンや発表会で弾いた記憶がありますし、一流のホールには必ずスタインウェイのピアノが置かれていたという印象があります。
このホールの設計にあたっても、プロの音楽家に限らず、芸術家の卵や子どもたちを含め、幅広い層の方々にお越しいただきたいという思いがありました。そのため、誰にとっても最適な楽器であることが重要だと考え、自然とスタインウェイを思い浮かべたのです。結果として、その選択は正しかったと感じています。

-ありがとうございます。正式なオープンはいつでしたでしょう?

2025年の1月から正式に予約を開始しました。実際にホールが完成したのは2024年11月で、それ以降はテスト的にいくつかのイベントを実施しました。コンサートやトークショー形式のセミナーなども行い、運営体制を整えて1月の本格オープンに至りました。

-1月からのオープン、誠におめでとうございます。試験運用を経てのスタートですね。私たちの耳にも、試用期間中すでに多くのアーティストの方々がご利用され、ご好評との評判が届いております。利用者の方々の反応はいかがでしょうか?

まず皆さんがおっしゃるのは、立地の良さです。非常にアクセスしやすい場所だという声をいただきます。そして実際に中へお入りになった後に感じていただくのが、設備の充実度です。もちろんスタインウェイのD型が入っていることも大きな特徴ですが、控室やトイレなど、この規模のホールとしては非常に充実した付帯設備がある点もご評価いただいています。
また、音響の良さに関しても自信を持ってご案内できます。偶然かもしれませんが、皆さん同じ表現で「音に包まれるような感覚がある」とおっしゃいます。設計段階から徹底して残響時間や反響バランスを追求してきましたが、私自身としては、建物自体に込められた歴史や想いによって不思議な力が働いて、それが音に何かしらの力を与えてくれているようにも感じています。

-確かに、外観は近代的ですが、エントランスからホールまでのアプローチは中世ヨーロッパを思わせるような重厚な雰囲気があり、資生堂や福原家の歴史にもつながるような趣があります。第一印象として、そのギャップが大変印象的でした。

ありがとうございます。没入感、世界観に浸るということも重要なコンセプトで、エントランスからホールへ向かうまでのプロセス自体も、ひとつの“演出(ストーリー)”として意識して設計しています。訪れた方に外の世界を少し忘れていただき、ここだけの特別な体験をしていただけるような空間づくりを目指しました。

-福原様はヴァイオリンもたしなんでおられ、若い音楽家のために最高の楽器を貸し出すといった支援活動もなさっていると伺っております。アンサンブルでのご利用もあるかと思いますが、そのような利用者からの反応はいかがでしょうか?

このホールはステージをあえて設けていないため、ピアノの位置を自由に動かすことができます。そのため、ピアノを使用しない公演にも柔軟に対応できますし、演奏者の立ち位置も自在にアレンジできます。
ピアノに限らず弦楽器や管楽器、あるいは声楽の方など、様々な演奏者にご利用いただいていますので、今後も様々なジャンルの演奏をされているお客様にお越しいただきたいと思っています。

-声楽の方のご利用もあるのですね。

はい。オペラ歌手の方や、合唱団のリハーサルなどにも頻繁にお使いいただいています。数十人規模で利用できるホールは意外と少ないため、そうした用途でも価値を見出していただけることを嬉しく思っています。

-今後、このホールの利用はますますの広がりを展開していくことと思いますが、将来的にどのような存在に育ってほしいとお考えでしょうか?

事業として持続性を持たせることは大前提ですが、それと同時に福原信三が資生堂ギャラリーを創設したときのフィロソフィーを受け継ぎ、公共性・公益性を持った文化施設として社会に貢献していきたいと思っています。
また、このピアノもこれから多くの方に弾いていただくことで音に深みが増していくと思いますし、このホールを皆様と一緒に“育てていく”場所にしていけたらと願っています。

-そのような理念を持った場所に弊社のピアノを選んでいただき、本当に光栄です。

ありがとうございます。我々の哲学の一つに「本物を追求する」という考えがあります。クラシックという言葉には“本物志向”という意味も含まれているように思います。スタインウェイさんのピアノもまさに“本物”ですし、完成されたアーティストだけでなく、これからを目指す方々にも、本物を志向する人たちにぜひ使っていただきたいと思っています。
そして、そうした人たちが出会い、交流する場所になることで、新しいサロン文化が生まれるのではないかと期待しています。

-最後に、福原様にとって音楽、そしてピアノとはどのような存在ですか?

このホールのテーマのひとつに「Richness in Everything」という言葉があります。これは初代社長の「物事はすべてリッチでなくてはならない」という理念に由来しています。私にとっての“豊かさ”とは、自分自身と向き合う時間を持つことです。
最近は例えば朝のルーティンとして、少しだけピアノに触れる時間を大切にしています。その日の自分のコンディションを映し出してくれる鏡のような存在です。同じ曲でも、弾き方ひとつで「今日は調子がいいな」とか「ちょっと疲れているな」と気づかされる。その時間が、私にとっては豊かさそのものだと感じています。

-素敵なお話ですね。お子様もピアノを?

はい。最近は私が弾こうとすると、子どもにピアノを奪われます(笑)。でもそれもまた幸せなことだなと思っています。私が楽しそうに弾いている姿を見て、子どもも自然とピアノに惹かれる。その姿を見ていると、これが本当の“豊かさの連鎖”なのかもしれないと感じます。

-親子でピアノの取り合いというのは、ほほえましいエピソードですね。
お子様にも、今後も永くピアノを楽しみながら続けていただきたいと願っております。
本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

[ 問い合わせ窓口 ]
La Salle F (代表)
TEL:03-5422-6768(受付時間10:00-16:00)
Email:salle@fkginza.co.jp
HP:https://lasalle-f.com/

 

▼ La Salle F様ご所有のD-274の詳細、購入ガイドは下記よりご覧ください。

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